歯科マウスピース矯正のクレーム対応 ロールプレイングで信頼回復した実例

こんにちは。歯科 接遇コンサルタントの久保佳世子です。

今回は、ある医療法人様でクレーム応対研修を行ったときのことをご紹介します。

久保佳世子が行う研修では、実際に医院で起こった事例をもとに、現場ですぐに実践できるロールプレイングが特徴です。

受講後すぐに研修で学んだことを現場で活かせます。

今回は、マウスピース矯正で起きたクレームの事例を取り上げました。

実際の状況を細かく確認しながら、本番さながらのロールプレイングです。

マウスピース矯正で起きたクレームの概要

  • マウスピース矯正患者
  • 患者は小学生
  • 付き添いは父親
  • 口腔内スキャナーでデータを採得後にメーカーへの発注を忘れていた
  • そのまま約3か月が経過
  • 患者のお電話で指摘を受けて初めて発覚

この内容を聞いた瞬間、これはクレームになって当然と、私は思いました。

むしろ、患者さんが怒るのは、ごもっともなことです。

「3か月も待ったのに何も進んでいない」
「なぜ誰も気付かなかったのか」
「子どもの大切な治療時間を返してほしい」

そう思われても、何ら不思議ではありません。

しかも今回は、お子さんだけではなく、ご両親の信頼まで大きく損ねてしまうケースです。

医院としては、技術以前に「信用」を失いかねない重大な出来事でした。

では、この事例に対し、どのようなロールプレイングとなったか、引き続きご覧ください。

ロールプレイング指導前の様子

クレーム応対で重要なのは「謝ること」だけではありません。

いかに患者さんの立場になった応対ができるか?が重要です。

私が指導する前の、謝罪の様子は、次のとおりです。

<謝罪した人>

分院の院長

<患者役(久保佳世子)が受けた印象>

全く謝罪の気持ちや誠意が伝わってきませんでした。

余計に患者を怒らせるような態度とも言えます。

「申し訳ございません」と、言葉ではおっしゃっているのですが、謝罪の気持ちが伝わりません。

  • 表情に申し訳なさがない
  • 姿勢が悪い
  • 患者さんの気持ちに寄り添う姿勢の欠如

つまり、言葉だけが謝っている状態だったのです。

矯正治療は、患者さんと長い期間にわたって関わる治療です。

だからこそ、治療のスタート時にしっかりと信頼関係を築けるかどうかが、その後の経過を大きく左右すると言っても過言ではないでしょう。

信頼関係が十分に築けていないと、不安や疑問が生じた際に不満は、さらなるクレームへ発展しやすくなり、治療へのモチベーション低下につながることもあります。

矯正治療を行う歯科医院が増えている中で、数ある医院の中から選んでくださった患者さんです。

その期待に応え、「この医院を選んで本当に良かった」と感じていただける対応で、その信頼に報いていきたいですね。

そのため、矯正治療においては、治療技術だけでなく、初診時の接遇やコミュニケーションが非常に重要な役割を担っています。

ロールプレイングで最初に指導したこと

次に、実際の謝罪を想定し、一連の流れに沿ったロールプレイングを30分間、徹底的に実施しました。

まずは、来院時の受付スタッフの応対からスタートです。

最初に、この3点を重点的に行います。

  • ご来院いただいたお礼を伝える
  • 来院時に受付スタッフから患者さんに謝罪の言葉を伝える
  • ただ謝るのではなく、具体的に謝罪の言葉を伝える

なぜなら、患者さんが来院後すぐに、受付スタッフから謝罪の言葉があるなしでは、その後の応対の難易度は大きく変わるからです。

もし、受付スタッフがクレームの患者と気づかず、通常の対応をしていたら、間違いなく患者さんは、さらにご立腹なさいます。

受付スタッフが医院を代表して、誠意をもってお迎えすることが、そこから先を円滑に進める第一歩になるのは言うまでもありません。

そのくらい重要なポジションにいるのが、受付スタッフです。

ロールプレイングはフィードバックが命

その後、患者さんの来院時から謝罪まで一連の流れをロールプレイングしていきましたが、ここで重要なのは講師からのフィードバックです。

わかった気になり、謝罪の言葉だけ覚えても意味がありません。

いかに、自分ごととして捉え、患者さんが共感できる言葉を伝えられるか。

そして、その言葉にあった態度が体現できているかを、講師がフィードバックすることで、身につきます。

患者さんは言葉だけを聞いているのではありません。

その人の表情、姿勢、視線、声の大きさ、話すスピード、間の取り方など、あらゆる要素から誠意を感じ取るものです。

つまり、誠意のない謝罪はすぐに伝わってしまい、患者さんの怒りをより増大させてしまいます。

その点を、講師が適切にフィードバックしなければ、患者さんに誠意が伝わることはないでしょう。

また、ロールプレイングを実施する際、謝罪は「技術」でもあると、心得ることが必要です。

今回の研修で重点的に練習したのは、次の項目でした。

  • 表情
  • 立ち居振る舞い
  • 第一声
  • 謝罪時の言葉づかい
  • 共感の言葉の伝え方
  • 患者さんの話を遮らずに聴く姿勢
  • ご納得いただくための提案の仕方

もちろん、ここでもやりっぱなしにせず、講師のフィードバックにより、技術をさらに磨きます。

さらに、参加者全員でディスカッションも行いました。

「自分だったらどう感じるか」

「患者さんは何に一番怒っているのか」

「この一言は患者さんをさらに怒らせるのではないか」

こうした意見交換も、謝罪の技術が向上するポイントとなるでしょう。

ロールプレイング指導を成功させるには

一般的な接遇研修では、お辞儀や言葉遣いといった基本動作の指導に重点が置かれがちです。

もちろん、それらは大切な土台。

しかし、分刻みで診療が進む歯科医院では、現場のオペレーションに合わない過度なホスピタリティよりも、「忙しい中でも患者さんに安心感を与える応対力」が求められます。

とはいえ、応対力を磨くために、ロールプレイングを実施すればいいか?というと、それだけでうまくいくはずは、ありません。

実際に医院で起こった事例を取り上げることで、参加者は「自分ごと」として捉えることができ、現場での再現性が高まるのです。

また、私のように、歯科の知識や現場の動きをよく理解しているからこそ、実践的な指導が実現します。

いかに現場に近い状況を再現できるかが成功のカギです。

ロールプレイング指導後、実際のクレーム応対の結果

さて、今回取り上げた医療法人様ですが、研修の4日後、クレーム応対に関する報告がありました。

お疲れ様です。報告です。

本日クレームの患者さんが来院されました。

結果、機嫌良く帰っていただくことができました。

ご両親とお子さんで来院されました。

新しいマウスピースはやはり合わず、再度スキャンとなりましたが、

久保先生に教えていただいた謝罪を練習して臨みました。

すべてを発揮できたわけではありませんが、誠意は伝わったと思います。

ロールプレイングの事例として取り上げていただきありがとうございました。

特に講義の中であった

「時」「場所」「人」を変える

という考え方が非常に有効でした。

また、患者さんが到着された時点で

受付から謝罪するという対応も大きかったと思います。

私が登場して謝罪したときには、

すでに機嫌はかなり良くなっていました。

ロールプレイングでの学びを実践された結果、患者さんに誠意が伝わり、このように、うれしいご報告をいただきました。

ロールプレイングは学びの宝庫

もちろん、謝罪を受け入れていただいたとはいえ、医院側のミスが消えたわけではありません。

患者さんにご迷惑をお掛けした事実も残念ながら変わらないです。

しかし、上っ面の言葉だけでなく、誠意が伝わる行動であれば、その後の関係性は大きく変わります。

もし、この研修がなく、ロールプレイングもしていなかったらどうなっていたでしょう。

おそらく患者さんの怒りはさらに大きくなっていたと思います。

やはり、実際に起こった一つの事例を全員で共有し、考えることほど、実践的な教材はありません。

いつ、誰が同じような立場になるか、わからないからです。

今後、起き得ることを事前に学べる最強の教材

それが、私が力をいれているロールプレイングの根幹です。

他人事ではなく、自分事として考えることが、現場力を高める一番の近道なのですから。

クレーム応対で一番大切なこと

患者さんは「申し訳ございません」の言葉を聞きたいのではありません。

  • 本当に反省しているのか
  • 責任を感じているのか
  • 自分の気持ちを理解してくれているのか

そういった部分を見ています。

だからこそ、

  • 誠意
  • 申し訳なさ
  • 責任感

これらが態度から伝わらなければ、謝罪は患者さんの心には届きません。

私はこれまで数多くのクレーム応対研修を行ってきました。

その中で感じるのは、

患者さんの多くは、

「怒りたい」のではなく、「分かってほしい」

と思っているということです。

もちろん、すべてのクレームが穏便に解決するとは限りません。

しかし、初期対応を誤ることで、小さな不満が大きなトラブルへ発展してしまうケースは少なくありません。

だからこそ、まず大切なのは、3点です。

  • 患者さんのお話を最後までしっかり聴く
  • 医院の都合を言わない
  • 前傾姿勢で聴く

このように患者さんのお気持ちを理解しようとする姿勢を示すことです。

クレームは決して嬉しい出来事ではありません。

しかし、対応次第では失った信頼を取り戻し、時には以前より信頼関係が深まることもあります。

クレームからファン患者へ

クレームは起こさないことが何より大切です。

しかし、起きてしまった際に、医院としてどう対応するかで、その後の医院の評価は大きく変わります。

患者さんの信頼は、クレーム応対で失われることもあれば、深まることがあるのも事実です。

患者さんの期待を大きく上回れば、失いかけた信頼を取り戻すだけでなく、医院のファンになってくださることもあります。

クレーム応対こそ、その医院の真価が問われる瞬間です。

クレーム応対にご関心のある先生は、ぜひ下記をご覧ください。

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投稿者プロフィール

歯科接遇コンサルタント 久保佳世子
歯科接遇コンサルタント 久保佳世子
2009年の事業開始以来、終始一貫、歯科専門のスタッフ教育に携わる。詳しいプロフィールはこちらから

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