【歯科医院専用】電話口で患者さんをさらに怒らせない方法とは
こんにちは、歯科専門 接遇コンサルタントの久保佳世子です。
やや不機嫌モードで電話をかけてきた患者さんを、かえって怒らせてしまった…という話をよく聞きます。
発する第一声のトーンで『まずい、これはクレームかも?』と感じる方もいらっしゃるでしょう。
そう。クレームは、忘れたころにやってくるものです。
そのため、普段の応対には慣れていても、いざクレームとなると、あたふたする方が多いのは致し方ありません。
そこで今日は、患者さんをさらに怒らせないための、電話応対について詳しくお伝えします。
かかってきた電話で、すでに不機嫌モードの患者さんに対して
明るい声で元気に電話に出ると、突然患者さんの冷やかかな声が聞こえてきた…といったときは、一瞬頭が真っ白になってしまい、丁寧な応対ができないケースもあるでしょう。
しかし、いつどんな電話がかかってくるか、予測はできないものです。
逆に言えば、どんな電話がかかってきても、即座に応対できるよう、日頃からスキルを磨いておくことが大切です。
では、かかってきた電話で、どのように応対していくか、流れをみていきましょう。
例として、「昨日の夜、被せものが取れた」とおっしゃる患者さんへの応対として、お読みください。
1)まずは、聴くことに徹する
「昨日の夜、被せものが取れた!どうしてくれるんですか!」
患者さんが怒っているからといって、むやみに「申し訳ございません」と、謝罪をしてはいけません。
うっかり謝罪をしますと「じゃぁ治療費を全額返してください」「そっちの非を認めたんですね!」と、さらにややこしいことになってしまいます。
「怒鳴られたら、謝ればいい」わけではないことを、おさえておきましょう。
それよりもまずは、何について不快な思いをなさったのか、丁寧に事情をお聞きします。
ひたすら、聴くことに徹してください。
患者さんが話し終わるまで、決して話の腰を折ってはいけません。
だからといって、無言で聞いているのもNGです。
「聞いてるの?!」と、さらに怒らせてしまうことにつながります。
つまり、適切なあいづちが必要です。
次の項目では、あいづちについて解説します。
2)適度にあいづちを打つ
ひらすら聴くと言っても、電話ですから。
無言でいるようでは、電話のむこうの患者さんは、あなたが聞いているかどうかがわかりません。
そこで「あいづち」を打つわけですが、注意点がいくつかあります。
ここを失敗すると、さらにお怒りはエスカレートしますので、気をつけましょう。
返事に「そうですか」はNG
あいづちは、次の言葉を使います
- はい
- さようでございますか
- お辛い中、恐れ入ります
- ご不便をおかけしております
「そうですか」は、言ってはいけません。子どものやりとりではないのですから、品のある言葉で患者さんの気持ちを受け止めましょう。
火に油を注ぐ あいづち3選
火に油を注ぐあいづちとして、3つご紹介します。使えば使うほど、大クレームへと発展するフレーズです。
- うん ← 患者さんは友達ではありません。
- なるほど・なるほどですね ← 上から目線で偉そうに聞こえます。「ですね」をつけてもダメです。
- はいはいはいはい ← バカにしているように聞こえます。
とくに、3番の「はいはいはいはい」と、はいを連発するのは、一生懸命に応対しようとするあまり、出てしまう言葉のようですが
はいの数が増えた分だけ、患者さんのお怒りも増幅していると思って間違いありません。
「はい」は、1回だけです。
これはクレームのお電話に限ったことではないですが。
患者さんの言葉を言い換えるのはNG
たとえば、患者さんが「昨日の夜に、被せものが取れた」とおっしゃったとしましょう。
そのとき、あなたも「昨日の夜に、被せものが取れたのですね」と、確認をするのはOKですが
「昨夜に」と、言い換えてはいけません。
患者さんがお使いになった言葉を、そのままお伝えします。
なかには「昨夜じゃない!昨日の夜だ!」と、憤慨なさる方もいらっしゃいます。
クレームのお電話においては、言い換え禁止と心得てくださいね。
3)これが言えればカンペキ。非のない謝罪フレーズ
さて、ここまで、ひたすら患者さんの言い分を聴くこと、適度なあいづちを打つことを見てきましたが
電話に出た担当者が「ひとことの謝罪もない」というのは、あらたなクレームの火種になりかねません。
そこで、適切な謝罪が必要です。
これはキラーフレーズですので、覚えておいてください。
「ご不便をおかけして、申し訳ございません」
言うまでもありませんが「すみません」はNGです。
ここでのポイントは「被せものが取れた」ことについては、謝っていない点です。
あくまでも「ご不便をおかけしている」点についての謝罪です。
冒頭にも書きましたが、むやみに謝ってしまうと、クリニックの非を認めてしまうことになり
理不尽な保障を要求されることにもつながりかねません。
もしそれが、調査の結果、本当にクリニック側に非があったとしても、電話を受けた時点で謝罪するのは不適切です。
患者さんのボルテージが上がっていると、簡単に謝って、ことをおさめようとしたくなるのは、わかりますが
なぜお怒りなのか、どこにご不満があるのか、しっかりお聞きして
誠意をもって対応するためにも、むやみな謝罪は禁物です。
電話口で「院長先生にかわってください!」と言われたら
「院長先生にかわってください!」
「あなたではわかりません!」
このようなことを、お怒りモードで告げられたら、恐怖のあまり、さっさと院長にかわってしまいたくなりますよね。
心情的には仕方のないことですが、仕事ですのでそうはいきません。
院長が治療中だとしても、そうじゃなくても
いったんは、電話をお切りし、折返しかけるのが適切です。
まずは、電話に出たあなたが、状況確認をしてください。
なぜ、院長と直接お話がしたいのか、親身になって耳を傾けましょう。
そして「院長は、診療中ですので、のちほど折り返します」とお伝えするわけですが
ここでも、伝え方にポイントがあります。
上記のように伝えたとして
「そんなの、そっちの勝手な都合でしょ!私は急いでるんだから、いまかわってください!」
と、返されたらどうしますか?
こう返されないようにするために、あらかじめ手を打ちましょう。
ポイントは患者さんのメリットを伝えることです。
「あいにく院長はただいま診療中です。しっかり時間をかけてお話しさせていただきたいので、診療後に折り返しいたしますが、よろしいでしょうか」
このようにお伝えすれば、あとからのほうが、じっくり話すことができると、わかっていただけます。
こちらの都合を押し付けないように、患者さんの気持ちを汲み取りましょう。
基本さえ守れば電話対応は難しくありません
いかがでしたでしょうか。
クレーム応対が、頻繁にあっては困りますが
たった1回の応対が、その後の患者さんとの関係性にも、大きく影響します。
しかし、基本を確実に実践すれば、新人であっても上手な電話応対は、可能です。
歯科医院の印象を決めるのは、最初の電話に出た人。
受付スタッフの電話対応が良いのは当たり前です。
受付スタッフ以外の歯科助手、歯科衛生士も、電話対応が良くないといけません。
一人でも電話応対の悪いスタッフが居れば、歯科医院全体の評価に直結するからです。
患者さんにとって、出た相手が誰であるかは関係ありません。
特に、急患対応やアポイント変更など、日常的によくかかってくる電話対応は、誰でもできるようにしておけると良いですね。